2025.12.1
【Q&A】001 院内でのスタッフの呼称
Q
病院のスタッフの名札にスタッフの名前を記載せずにイニシャルや偽名(ニックネーム)記載することは法的に許されますか。
A
最近、患者さんやそのご家族からのハラスメント(いわゆる「カスハラ」)対策や、スタッフのプライバシー保護の観点から、名札にフルネームを記載したくない、というご相談は医療現場で非常に増えています。
まず、法律上「病院スタッフの名札は、必ずフルネーム(氏名)を記載しなさい」と直接的に義務付ける法律は、現在のところありません。
したがって、イニシャルやニックネーム(偽名)を記載したからといって、直ちに法律に違反するわけではありません。
ただし、医療という業務の特性上、フルネームを記載しないことには法的な課題が伴います。
Ⅰ 医療安全とトレーサビリティ(追跡可能性)
医療は人の生命や身体に直接関わる行為です。万が一、医療安全にかかわる事態や患者様とのトラブルが発生した際に、「誰が」「いつ」「どのような処置をしたか」を後日検証できる必要があります。 仮にイニシャルやニックネームを使用することで担当者の特定が困難になるような事態が生じれば、病院としての安全管理体制や説明責任が問われる可能性があります。
Ⅱ 医師・歯科医師の氏名掲示義務
医療法では、医師・歯科医師について、院内の見やすい場所(待合室など)にその「氏名(フルネーム)」を掲示することが義務付けられています。名札もこれに準じてフルネームを記載するのが、患者さんの信頼を得る上でも望ましい運用です。
これらのバランスを考え、多くの医療機関では、ハラスメント対策と識別可能性を両立させるため、医師・歯科医師:はフルネーム(+職種)、看護師・技師・事務など: 姓(名字)のみ(+職種)という運用が用いられています。
ただし、スタッフのプライバシーや安全を守る「安全配慮義務」と、患者さんに安全な医療を提供する「安全管理体制」。この2つのバランスをどう取るかは、職種や病院の規模、診療科、医療現場それぞれによっても異なり、非常に専門的かつ慎重な経営判断が求められます。
私たち弁護士法人海星事務所は、医療分野、薬事分野、介護分野、そして企業法務に関する法律事務を多く取り扱っております。
弁護士業務20年以上の実績を活かし、東京・大阪の事務所から全国の医療法人様、企業様をサポートしております。スタッフの労務管理や院内体制の整備でお悩みの際は、ぜひ一度、海星事務所にご相談ください。
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